『ブラッサム』の次週予告で聞こえた「墓をあばく」。穏やかな札幌の暮らしから、急に物騒な話になるのかと気になった方もいるのではないでしょうか。
この言葉は、珠のモデルである宇野千代が書いた実在の小説『墓を発く(はかをあばく)』につながります。1922年(大正11年)の『中央公論』に掲載された作品です。
ただ、宇野千代の作家としての出発点を調べると、『脂粉の顔』という別の題名も出てきます。この二つはどのように違うのでしょうか。予告で分かったことと文学史上の記録を分けながら整理します。
※11月6日公開の第7週予告に関する報道と、宇野千代の初期作品に触れます。未放送回の詳しい結末は扱いません。
ブラッサムの「墓をあばく」は実在小説の題名につながる
▼[ブラッサム] 次週予告 第7週「あばく、書く」11/9(月)~放送予定 | 朝ドラ | NHK

11月9日から放送予定の第7週は「あばく、書く」。11月6日付のスポニチアネックスの予告紹介では、珠や黒崎大三郎が口にする言葉を、宇野千代の小説『墓を発く』の題名として紹介しています。
耳で聞くと行動の説明にも思える言葉ですが、まず小説の名前として捉えると、予告の見え方が変わります。珠が何を書き、それを黒崎がどう読むのかという、文学の物語への入口になるからです。
「発く」の読み方は「あばく」
作品名は『墓を発く』と書き、「はかをあばく」と読みます。検索するときにひらがなの「墓をあばく」と漢字の「墓を発く」が出てくるのは、この表記の違いによるものです。
古い資料では「発」の旧字体が使われた表記もあります。国立国会図書館のレファレンス協同データベースには、そうした表記を含めて作品の掲載先が案内されています。
『墓を発く』と『脂粉の顔』は別作品!デビューの流れを整理
二つの題名は、同じ作品の別名ではありません。『脂粉の顔』の懸賞入選が先で、『墓を発く』の雑誌掲載が後です。
| 作品 | 時期 | 確認できる出来事 |
|---|---|---|
| 脂粉の顔(しふんのかお) | 1921年・大正10年 | 懸賞小説で一等入選 |
| 墓を発く(はかをあばく) | 1922年・大正11年 | 『中央公論』5月号に掲載 |
文京区の宇野千代紹介には、『脂粉の顔』が大正10年に懸賞小説で一等に入選したことが記されています。『墓を発く』については、埼玉県立久喜図書館が提供するレファレンス事例で、『中央公論』大正11年5月号への掲載を確認できます。
ここからは、二つの出来事の位置づけについての整理です。「デビュー」という一語だけでは、賞に選ばれた時点を指すのか、文芸誌に作品が載った時点を指すのかが見えにくくなります。
『脂粉の顔』は懸賞で評価された節目、『墓を発く』は『中央公論』への掲載という次の節目。そう分けておくと、「デビュー作の名前が違うのはなぜ?」という疑問も解きやすくなります。
ドラマを見ながら史実を調べる際も、二つを一つの受賞・掲載の出来事にまとめず、順番を押さえるのがポイントです。
『墓を発く』と黒崎のつながりを考える手がかり
▼[ブラッサム] 次週予告 第7週「あばく、書く」11/9(月)~放送予定 | 朝ドラ | NHK

予告には、遠藤憲一さんが演じる黒崎大三郎も登場します。実在の作品を調べると、宇野千代と編集者・滝田樗陰(たきた・ちょいん)を結ぶ資料が残っていることが分かります。
日本近代文学館の「宇野千代展―100年の旅人―」の案内では、滝田樗陰コレクションから『墓を発く』などの原稿と、滝田宛ての書簡を紹介すると説明されています。作品名だけでなく、書き手と編集者の接点を伝える資料があるのです。
ここからはドラマの見どころについての考察です。珠と黒崎の関係で注目したいのは、出会いそのものに加えて、珠の書いたものがどんな評価を受けるのかという点です。小説を書くことと、その作品が読者のもとへ届くことの間には、原稿を読む人の判断があります。
黒崎が何に目を留め、珠にどんな言葉を返すのか。そのやり取りを見ると、珠が書き手として歩み出す過程を楽しめそうです。
なお、これは史実の資料から考えられる鑑賞の視点です。実在の編集者とのやり取りが、そのままドラマの会話や展開になると確定しているわけではありません。
宇野千代の『墓を発く』を読むには?
題名に興味を持ったら、実際の小説へ進むこともできます。レファレンス協同データベースでは、収録書籍として『老女マノン・脂粉の顔 他四篇』(岩波書店、2019年)が紹介されています。
本の表題に『墓を発く』が出ていなくても、収録作品の一つとして読むことができます。図書館などで探すときは、作品名に加えて著者名「宇野千代」と書名を伝えると探しやすくなります。
同データベースには、1924年刊の『幸福』に収められた本文について、国立国会図書館デジタルコレクションの案内もあります。利用方法はリンク先の表示をご確認ください。
ドラマの予告と小説本文は、楽しみ方も異なります。予告は珠のこれからを想像する入口、小説は宇野千代自身の文章を読む入口です。両方を比べる場合は、まずドラマで示された内容を確かめてから読むと、作品の扱われ方の違いにも気づけるでしょう。
まとめ
『ブラッサム』の「墓をあばく」は、宇野千代の実在小説『墓を発く』につながる言葉です。史実では1921年に『脂粉の顔』が懸賞入選し、翌1922年に『墓を発く』が『中央公論』に掲載されました。
二つの作品と出来事を分けておくと、珠の小説家への道も追いやすくなります。第7週では、珠が書くことにどう向き合い、黒崎がその作品をどう受け止めるのかに注目したいところです。
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