『半沢直樹』の視聴率を見返すたびに、ひとつの疑問が浮かびます。最終回42.2%という数字を超える連続ドラマは、もう生まれないのでしょうか。
2013年版は、関東地区の世帯視聴率で期間平均28.7%、最終回42.2%。しかも初回から最終回まで、一度も前回の数字を下回りませんでした。2020年版も期間平均24.7%、最終回32.7%を記録しています。
さらに2020年版最終回は、録画視聴を合わせた総合視聴率が44.1%に達し、その年の紅白歌合戦を上回りました。リアルタイム視聴だけでなく、後から見た人まで含めても、極めて広く届いた作品だったことが分かります。
この数字を見ると、主演の堺雅人さんに驚異的な集客力がある、と考えたくなります。もちろん、堺さんが演じた半沢の迫力や「倍返しだ」という決めぜりふは、大きな推進力でした。ただ、主演俳優の人気だけで42.2%を説明するのは無理があります。
『半沢直樹』には、組織の理不尽に耐えてきた人が反撃する分かりやすい物語、毎週の決着と新たな危機を組み合わせた構成、顔と声を大きく使った劇場型の演出がありました。そして何より、「結末を誰かに知らされる前に見たい」「翌日、職場や学校で話したい」と思わせる力がありました。
私には、高視聴率の正体は人気の合計というより、大勢の視聴者を同じ時間にテレビの前へ集める力だったように見えます。
一方、現在は録画や見逃し配信、有料配信など、視聴する場所と時間が分散しています。総務省のメディア利用調査を基にした分析でも、若い世代ほどテレビ視聴時間が短い傾向が示されています。
そのため、同じ規模の人気作品が登場しても、リアルタイムの世帯視聴率だけでは、その広がりを十分に表せない時代になりました。視聴率は今も広告取引や番組編成の重要な指標ですが、テレビ所有世帯のうち何%が放送中に見ていたかを示す数字です。
それでも、「半沢直樹級は二度と無理」と決めつけるのは早い気がします。その瞬間に見なければ話題に参加できない空気をドラマがつくれれば、再び突出した数字が生まれる可能性はあります。
ただし、42.2%を再現するには、良質な作品であるだけでは足りません。世代を超えて理解でき、ネタバレを避けるためリアルタイムで見たくなり、放送後に語り合いたくなる「事件性」が必要です。
昔と同じ意味での『半沢直樹』級視聴率は、かなり生まれにくくなった。これが私の答えです。しかし、配信や録画も含め、社会全体が同じ作品を共有する現象は、まだ起こり得ます。
これから問うべきなのは、42.2%を超えたかどうかだけではありません。ひとつの作品が、どれほど多くの人の時間と会話を動かしたのか。その見方に切り替えたとき、次の「半沢直樹級」は、すでに別の姿で生まれ始めているのかもしれません。







