映画『8番出口』の地下通路は、実在する駅で撮影されたものではありません。倉庫の中にループ2周分、全長100mを超えるセットを造り、実物の仕掛けとVFXを組み合わせて撮影されました。
ただし、映画のすべてがセット撮影というわけでもありません。冒頭と終盤の現実世界では、東京メトロの新木場にある施設、東新宿駅、代々木公園駅周辺が使われ、別々の場所を一つの架空駅に見せています。
この記事では、無限通路のロケ地と実在駅を分け、同じ場所が延々と続くように見える撮影方法を整理します。
※物語の結末には触れませんが、撮影方法に関する情報を含みます。
映画の撮影場所を場面別に整理すると、次のようになります。
| 場面 | 撮影場所 | 確認できる内容 |
|---|---|---|
| 無限にループする地下通路 | 倉庫内に建てたセット | ループ2周分、全長100m超 |
| 冒頭の電車内 | 東京メトロの新木場にある施設 | 停車中の車両で撮影 |
| 電車から駅構内へ進む場面 | 東新宿駅 | 新木場の映像から自然に接続 |
| スマホが落ちた後の駅構内 | 代々木公園駅 | スマホの動きに紛れて場所を切り替え |
| 終盤の8番出口へ向かう階段 | 代々木公園駅周辺 | セットの通路へ続くように見せた |
VFXを担当したTREE Digital Studioは、無限通路について「実際の駅ではなく、倉庫内にセットを建設した」と説明しています。
一方、今回確認した東宝と制作会社の公開資料では、セットを建てた倉庫の具体的な所在地までは明らかにされていません。「東京都内の特定スタジオ」などと住所を断定することはできません。
地下通路のセットは短い廊下を一つ造っただけではなく、ループ2周分に相当する全長100m以上の回廊でした。東宝の舞台挨拶でも、川村元気監督がメイン通路のセットは二つあったと説明しています。
この長さがあるため、二宮和也さん演じる「迷う男」が同じ通路を進み、河内大和さん演じる「歩く男」と何度もすれ違う場面を、簡単にカットで分断せず撮影できました。
川村監督によると、条件が整えば一続きの撮影で最大3ループまで収められたそうです。画面の中で本当に歩き続けているからこそ、ゲームのようでありながら、人間の息づかいが残る映像になっています。
無限ループを支えたのはVFXだけではありません。最も意外なのが、歩く男の移動方法です。
河内さんは二宮さんとすれ違った後、セットの扉から外へ出て、自転車で次の通路へ急行していました。定位置に着いたら呼吸を整え、何事もなかったように再び歩いて現れます。
撮影当初は走って移動していましたが、二宮さんの進行に間に合わず、途中から自転車が導入されました。映画では無表情で歩く人物の裏側で、河内さんが全速力で移動していたことになります。
これはコンピューター処理ではなく、俳優とセットを実際に動かすフィジカルなトリック撮影です。
VFXとは、撮影した映像にコンピューター処理を加え、現実には撮れない景色や動きを成立させる技術です。
『8番出口』では、100m超のセットをさらに無限に見せるため、通路の端で撮った映像同士をVFXでつないでいます。
単につなぎ目を隠すだけではありません。壁のタイルの位置、表面のつや、照明の反射、人物や物の映り込みまで一致させなければ、観客はわずかなズレを「異変」として見つけてしまいます。そのため、普通の映画以上に細かな調整が必要でした。
階段付近では、セットと実在する駅を交互に使った場面もあります。場所によって違う光の色や強さを調整し、同じ地下空間が続いているように仕上げています。
劇中の異変も、すべてがCGというわけではありません。
二宮さんが引き返している間に、画面外のスタッフがポスターを交換し、コインロッカーを移動。案内板や非常口表示には、素早く反転できる仕掛けが用意されていました。
画面の表側では主人公が歩き続け、そのすぐ後ろではスタッフが大急ぎでセットを変更していたのです。
ここからは制作情報を基にした見方ですが、人力によるごくわずかな揺れやタイミングのズレも、『8番出口』特有の「何かがおかしい」という感覚につながったと考えられます。
現実世界の駅構内も、一つの駅だけで撮影したわけではありません。
東宝の完全攻略舞台挨拶で川村監督が明かした流れは、次のとおりです。
車両の窓にはグリーンの素材を設置し、後から走行中の景色を合成しています。駅と電車の場面だけで、映画全体のVFXのおよそ4分の1を占めたとされています。
観客には一つの長い主観映像に見えますが、実際には複数の駅、車両、セット、CGが重なった「存在しない駅」なのです。
『8番出口』のロケ地として、清澄白河駅の名前が挙がることがあります。しかし、映画の無限通路を清澄白河駅で撮影したという公式情報はありません。
清澄白河駅との関係が確認できるのは、原作ゲームに登場する「照明の配置がばらばらになる異変」です。開発者のKOTAKE CREATEさんは、ゲームメーカーズのインタビューで、この異変は清澄白河駅をモデルにしたと説明しています。
一方、ゲーム全体の地下通路は別の駅を土台に、複数の駅の要素を加えて作られており、土台となった駅名は非公表です。
つまり、清澄白河駅は一部の異変の参考であって、映画の無限通路そのものの撮影場所ではありません。「ゲームのモデル」「映画の実在駅ロケ」「倉庫セット」は分けて考える必要があります。
映画『8番出口』の無限に続く地下通路は、実在する駅ではなく、倉庫内に建てた全長100m超のセットです。倉庫の具体的な所在地は、確認できる公式資料では公表されていません。
巨大なセットだけでも、VFXだけでも、この映像は成立しません。実物の空間、人の動き、デジタル処理を重ねたことが、現実にありそうで存在しない「8番出口」を生み出しています。