名探偵・金田一耕助といえば、石坂浩二さんがはまり役ですが、
名作「八つ墓村」(1977年の映画)の作品は、石坂浩二さんが金田一耕助役でなかった作品です。
なんと金田一耕助役は、あの渥美清さんでした!
横溝正史原作の小説でも名高い「八つ墓村」の映画版「八つ墓村」では、石坂浩二さんが金田一耕助でなかった、そして「八つ墓村」が石坂浩二さん主演で制作されなかったのには理由がありました。
その理由を探ります!
※注記:映画版の金田一耕助シリーズは、1976年「犬神家の一族」以降、渥美清「八つ墓村」、西田敏行「悪魔が来りて笛を吹く」、古谷一行「金田一耕助の冒険」、三船敏郎「金田一耕助の冒険」、鹿賀丈史「悪霊島」、豊川悦司「八つ墓村」と続々と映画化されました。本記事では、石坂浩二「金田一耕助シリーズ」と渥美清「八つ墓村」を対象に絞り、解説します。
目次
石坂浩二の金田一耕助シリーズ(1976年ー2006年)
▼犬神家の一族:2006年〈平成18年〉東宝映画(リメイク)
金田一耕助を演じる石坂浩二さんが主演の映画版「横溝正史シリーズ」は、全6作あり、
全作品の監督は、市川崑さんです。
●犬神家の一族:1976年〈昭和51年〉角川映画
●悪魔の手毬唄:1977年〈昭和52年〉東宝映画
●獄門島:1977年〈昭和52年〉東宝映画
●女王蜂:1978年〈昭和53年〉東宝映画
●病院坂の首縊りの家:1979年〈昭和54年〉東宝映画
●犬神家の一族:2006年〈平成18年〉東宝映画(リメイク)
全6作品通じて、主演:石坂浩二(金田一耕助役)、監督:市川崑。
石坂浩二主演、市川崑監督の名タッグで生まれた映画版金田一耕助シリーズは、大ヒットを記録し、また日本映画史に残る作品シリーズでもあり、いまなおテレビ再放送などで、日本国民に愛され続けています。
石坂浩二主演と市川崑監督による映画版金田一耕助シリーズの印象が強烈ですが、映画・テレビドラマで金田一耕助役は、西田敏行さん、古谷一行さんなど、新しくは長谷川博己さん、池松壮亮さん、吉岡秀隆さん、加藤シゲアキさんなど、多くの方々が演じてます。
これからも続々と金田一耕助シリーズは制作され続けていくでしょうから、どんな役者が金田一耕助を演じるのか楽しみです。
このように数多くの映画版およびテレビドラマ版の金田一耕助シリーズが生まれてきたわけですが、そのなかでも、異色と言われる名作「八つ墓村」(1977年の映画)があります。
映画版「八つ墓村」(1977年)と石坂浩二・市川崑の金田一耕助シリーズの違い
映画版およびテレビドラマ版の金田一耕助シリーズは、主役が探偵・金田一耕助なのですが、「八つ墓村」(映画1977年)は少し毛色が変わっている感じがします。
のちの評価は、名作でもあり、かつ、石坂浩二・市川崑の金田一耕助シリーズの作風とは違う、かなりの異色作であったとされています。
渥美清さんが演じる探偵・金田一耕助が謎を解き明かすというのも作中にはあるのですが、この映画全体を覆うのは、ホラーでありオカルトなんです。
当時、この「八つ墓村」を映画館で鑑賞して、その恐ろしさに映画館で震えあがったのを今でも覚えてます。そして僕のトラウマになってます。
「祟りじゃーっ」は流行語にもなりました。
主役は萩原健一さんで寺田辰弥(多治見家の後継ぎ)を演じます。
面白いのは、萩原健一さんの少年時代を、「男はつらいよシリーズ」の満男役、のちのテレビドラマ「八つ墓村」(2019年)で金田一耕助役の吉岡秀隆さんが演じます。金田一耕助役は寅さんがあまりにも板についた渥美清さんなのです。縁でしょうか。
つまり、主役は金田一耕助ではないのです。
それでは、横溝正史原作の小説でも名高い「八つ墓村」の映画版「八つ墓村」では、石坂浩二さんが金田一耕助でなかった理由、そして「八つ墓村」が石坂浩二さん主演で制作されなかった理由を探ります。
映画版「八つ墓村」(1977年):石坂浩二さんが金田一耕助でなかった理由、そして「八つ墓村」が石坂浩二さん主演で制作されなかった理由
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横溝正史さんの名作小説「八つ墓村」は、そのユニークなストーリーと魅力的なキャラクターで、多くの読者に愛されています。特に、名探偵金田一耕助を主人公にしたこの作品は、推理小説ファンの間で特別な地位を占めています。
しかし、この小説の映画化にあたり、金田一耕助役を演じる俳優として石坂浩二さんが選ばれなかった理由、そしてなぜ「八つ墓村」が石坂浩二さん主演で制作されなかったのか、には興味深い背景があります。
1975年に松竹によって制作、1977年公開された「八つ墓村」の映画版では、金田一耕助役には石坂浩二さんではなく、渥美清さんが起用されました。このキャスティングの背景には、当時の映画業界の状況と、制作会社間の権利問題が大きく関わっています。
1960年代後半から始まった横溝ブームを受け、横溝正史さんの作品は漫画化や映画化が進み、特に「八つ墓村」はその中でも人気の高い作品でした。このブームの中、角川書店(現・KADOKAWA)の角川春樹さんは、横溝作品の文庫化を進め、その人気をさらに拡大させました。角川春樹さんはまた、横溝作品の映画化にも積極的で、自らが企画する角川映画の制作にも意欲的でした。
一方で、松竹は既に「八つ墓村」の映画化権を持っており、監督に野村芳太郎さん、脚本に橋本忍さん、そして音楽に芥川也寸志さんを迎えるなど、豪華なスタッフで制作を進めていました。この時、石坂浩二さんが金田一耕助役で出演することは検討されていましたが、角川書店側が映画製作に関わりたいという希望を示し、その結果、角川書店と松竹との間で権利の交渉が行われました。交渉の結果、松竹は「八つ墓村」のみを制作することになり、石坂浩二さんではなく、渥美清さんが金田一耕助役に選ばれることになったのです。(松竹は映画「男はつらいよ」シリーズを制作、主役・車寅次郎はご存じの渥美清さん)
このキャスティングの変更は、映画「八つ墓村」を石坂浩二さんの金田一耕助シリーズとは一線を画す作品にしました。渥美清さんの演じる金田一耕助は、石坂浩二さんのそれとは異なる魅力を持ち、作風も大幅に異なるものとなりました。映画は「祟りに見せかけた犯罪」ではなく「本当の祟り」として事件を描き、推理物でありながらオカルト映画へと改変した異色作として、大ヒットを記録しました。
こうした経緯を通じて、「八つ墓村」の映画版は、石坂浩二さんが金田一耕助を演じなかった独自の歴史を持つ作品となりました。映画業界の権利問題や制作背景が、作品のキャスティングや作風に大きな影響を与えることがあります。この事例は、映画制作の複雑さと、それが作品に与える影響の一例と言えるでしょう。