※この記事は、2026年8月21日放送の第105回までの内容と、公開されている史料に触れています。
朝ドラ『風、薫る』に近づいている戦争は何なのか、気になった方も多いのではないでしょうか。
結論からいうと、ドラマで描かれ始めたのは1894年(明治27年)に始まった日清戦争です。太平洋戦争でも、その10年後に始まる日露戦争でもありません。
そして、看護婦が戦争に動員されたことも史実です。ただし、日清戦争では女性看護婦が大陸の戦場へ送られたのではなく、主に広島など国内の軍病院で、大陸から運ばれた傷病兵を看護しました。
第105回は、シマケンが東京を去ってから時が流れ、りんと直美が看護の仕事を続ける中、日本に戦争の足音が迫る展開です。ステラnetの第105回予告では、虎太郎の担当変更と多江からの報告が予告されていました。
ドラマに登場した「大本営」「朝鮮への出兵」という状況と明治27年の年代を合わせると、戦争は日清戦争です。日清戦争は1894~1895年、日本と清が朝鮮半島をめぐる対立などを背景に戦った戦争でした。
| ドラマに出た手がかり | 史実上の意味 |
|---|---|
| 明治27年 | 日清戦争が始まった1894年 |
| 大本営の設置 | 戦時に陸海軍を統轄する最高機関が置かれた |
| 朝鮮への出兵 | 日清戦争へ進む直接的な状況 |
| 多江の広島行き | 広島の陸軍病院で看護婦が活動した史実と重なる |
「戦争」という言葉だけから昭和の太平洋戦争を思い浮かべると、時代が約半世紀ずれてしまいます。
ここが最も誤解しやすい点です。日本赤十字社の史料によると、日清戦争当時、清がジュネーブ条約に加入しておらず戦場で女性の安全を確保できないとして、軍は女性の海外戦地への派遣を禁止しました。
海外へ派遣されたのは、医師、看護人、調剤員など男性救護員713人です。一方、女性の看護婦生徒は養成期間を短縮され、国内の軍病院へ送られました。そこで約1年5カ月にわたり、大陸から搬送された負傷者や病人の救護に当たっています。
| 救護に当たった人 | 主な派遣先 | 史料で確認できること |
| 男性救護員 | 海外 | 医師・看護人・調剤員など713人を派遣 |
| 女性看護婦・生徒 | 国内の軍病院 | 大陸から搬送された傷病者を救護 |
| 篤志看護婦 | 広島など国内の病院 | 志願して看護や看護婦の監督に従事 |
したがって「看護婦が戦地へ行った」と一言で表すのは正確ではありません。広島は戦争を支える大きな拠点であり、病院も過酷な戦時医療の現場でしたが、女性看護婦の派遣先は海外の戦場ではなく国内でした。
生田絵梨花さんが演じる多江が広島の陸軍病院へ向かう展開には、史実上のはっきりした類例があります。
国立公文書館の資料では、新島八重が日清戦争中、広島の陸軍予備病院で篤志看護婦(とくしかんごふ)として活動したことが確認できます。看護婦取締として広島の病院に勤務した高山みつらも、戦後に功績を認められました。
篤志看護婦(とくしかんごふ)は、専門教育を受けた日赤の養成看護婦と完全に同じ立場ではありません。自ら志願して救護に加わる女性たちもいたため、ドラマの多江には、そうした人々の史実が重ねられていると考えられます。
ただし、多江が新島八重その人をモデルにしたと公式発表されたわけではありません。「広島の陸軍病院へ志願する」という共通点は確認できますが、人物を一対一で同一視しない方が正確です。
日清戦争は多くの命を奪った一方、看護婦の必要性と専門性が社会に知られる契機にもなりました。これは戦争を肯定する意味ではなく、膨大な傷病者を前に、訓練された看護の価値が可視化されたという歴史上の逆説です。
日赤は戦時救護で女性看護婦の働きが認められた後、女性の海外派遣が許可されると養成を強化しました。また、全国から集まった救護員の教育内容に差があることも分かり、1896年には統一教科書『看護学教程』を発行しています。
国立公文書館によると、高山みつ、新島八重らは1896年に勲七等宝冠章を受け、民間女性として初の勲章受章者となりました。献身が称賛された一方、看護婦が国家の戦争遂行を支える役割に組み込まれていった面にも目を向ける必要があります。
りんと直美は、実在の看護婦である大関和と鈴木雅をモチーフにしつつ、ドラマの人物として再構成されています。そのため、実在人物の経歴をそのまま今後のネタバレとして扱うことはできません。
第105回までに確かめられるのは、戦争によって虎太郎と多江の進路が動き始めたことです。りんと直美が同じ形で派遣されるのか、東京に残ってどのような看護を担うのかは、今後の公式あらすじや放送を待つ必要があります。
ただ、物語の焦点が「看護婦になれるか」から、戦争の中で誰の命をどう救うのかへ移る可能性は高そうです。これは公開情報と史実を踏まえた考察であり、確定した展開ではありません。
『風、薫る』で描かれ始めた戦争は、1894~1895年の日清戦争です。
日清戦争で看護婦が動員されたのは史実ですが、女性は安全上の理由から海外戦地への派遣を禁じられ、広島など国内の軍病院で大陸から運ばれた傷病兵を看護しました。多江の広島行きは、新島八重ら篤志看護婦の活動と重なる部分があります。
一方、ドラマの人物と実在人物は同一ではありません。確定した描写と史実、今後の考察を分けて見ることで、りんと直美が戦争と看護にどう向き合うのかを、より深く受け止められそうです。