豪雨の後、道路や駐車場の水が引くと「エンジンがかかるか試したい」と思うかもしれません。しかし、車内や床面まで水に浸かった車は、外見が乾いていても内部に水や泥が残っている可能性があります。
結論からいえば、キーを回す、スタートボタンを押す、自走して修理工場へ向かうのは避けてください。 安全な場所からJAFなどのロードサービス、販売店、整備工場へ連絡し、点検と搬送を依頼するのが基本です。
水没した車でエンジンをかけてはいけない3つの理由

1.電装系がショートし、感電するおそれがある
水や泥が配線、制御装置、バッテリー周辺に入ると、電気系統がショートするおそれがあります。水が引いても内部まで乾いたとは限らず、スイッチ操作をきっかけに故障や感電につながる可能性があります。
2.エンジンやブレーキの損傷を広げる可能性がある
吸気系やエンジン内部に水が入った状態で始動すると、重大な損傷を招くことがあります。ブレーキや各種センサーも正常とは限りません。「少しだけ動かす」つもりでも、安全に止まれない可能性があるため自走は禁物です。
3.時間がたってから車両火災につながる場合がある
浸水車は、電気系統のショートによって発火する可能性があります。特に海水には塩分が含まれ、乾いた後も腐食や短絡の危険が残ります。異臭、煙、発熱がある場合は近づかず、119番へ連絡してください。
水が引いた後、まず何をすればよい?
行動は次の順番で整理すると迷いにくくなります。
- 流水、切れた電線、崩落などの危険がないか確認し、危険なら車に近づかない。
- エンジン、電源、ライト、ワイパーなどを操作しない。
- 安全な場所からJAF、保険のロードサービス、販売店または整備工場へ連絡する。
- 車種、浸水位置、海水か泥水か、始動操作の有無を伝え、搬送と点検を依頼する。
- 保険会社へ説明する写真は、周囲の安全を確保できる場合だけ撮る。
「水が引いた=走行可能」ではありません。 点検が終わるまでは使用せず、修理工場へも自走しないでください。
ガソリン車とHV・EVで注意点はどう違う?

| 車の種類・状況 | 避けること | 基本の対応 |
|---|---|---|
| ガソリン車・ディーゼル車 | エンジン始動、電装品の操作、自走 | ロードサービスや整備工場へ連絡し、搬送と点検を依頼 |
| HV・PHEV・EV | 電源操作、高電圧部品や配線への接触、自己判断のバッテリー作業 | 車に触れず、車種を伝えて専門業者へ連絡 |
| 海水に浸かった車 | 始動、自己判断での端子操作、車の近くでの待機 | 発火に備えて距離を取り、専門業者へ連絡 |
国土交通省は、従来型の車について発火防止のためバッテリーのマイナス端子を外す手順も案内しています。ただし、方法が分からない場合や泥水が残っている場合に無理をするのは危険です。HV・PHEV・EVには高電圧系統があるため、自分で触れないでください。
車種を問わず最も安全な共通行動は、始動せず、操作せず、専門業者に任せることです。
まだ車内にいる場合は「車より人命」を優先
浸水中に車内にいる場合は、水が引いた後の処置とは別です。まずシートベルトを外し、電動窓が動くうちに窓を開け、そこから脱出します。
窓が開かなければ、脱出用ハンマーで割れる側面ガラスを狙います。フロントガラスや一部の合わせガラスは割れにくいため、ハンマーが使える場所を平時に確認しておきましょう。
ドアは外の水位が上がるほど水圧で開けにくくなります。窓から出られない場合は、車内外の水位差が小さくなった瞬間にドアを押し開ける方法が最終手段です。脱出後は安全な場所へ移動し、110番または119番へ連絡してください。
どの水深から危険?見た目だけで判断しない
日本自動車工業会「浸水・冠水した車両は火災が発生するおそれがあります」

国土交通省は、水深が床面を超えると電気装置の損傷や車内への浸水が起こり、タイヤ全体が水に浸かると車体が浮くおそれがあると案内しています。ドアの半分ほどまで水が来ると、水圧でドアを開けるのは非常に困難です。
ただし「床面より下なら安全」という意味ではありません。速度や対向車の波で水位が一時的に上がり、吸気口へ水が入る場合があります。アンダーパスや水深の分からない冠水路には、最初から進入しないことが重要です。
水没車についてよくある疑問
誤って一度スタートボタンを押したら?
何度も始動を試さず、安全な場所へ離れてください。ロードサービスや整備工場へ、どの操作をしたか正確に伝えます。煙や異臭があれば近づかず、119番へ連絡しましょう。
数日乾かせば乗れる?
外側が乾いても、配線や制御装置、ブレーキ内部の状態は判断できません。専門業者の点検を受けるまでは運転しないでください。
自分で修理工場まで運転してよい?
いいえ。エンジンやブレーキ、電装系の異常が走行中に表面化する可能性があります。レッカーや積載車での搬送を依頼してください。
まとめ
- 水没・冠水した車は、水が引いてもエンジンや電源を入れない。
- HV・PHEV・EVや海水に浸かった車には触れず、専門業者へ連絡する。
- 浸水中に車内にいる場合は、車の保全より脱出と人命を優先する。
慌てて動かすほど、故障や火災の危険を大きくする可能性があります。まず安全を確保し、車種と浸水状況を伝えてプロの判断を仰ぎましょう。







