※以下、『VIVANT』第17話と第18話の重要なネタバレを含みます。
『VIVANT』第18話で、9日間も飲まず食わずにされ、死の寸前まで追い込まれた野崎守(阿部寛さん)。そこへ戻ってきた劉銘軒(リュウ・ミンシュエン/堺雅人さん)は、部下のシンを激しく叱り、野崎へ水を飲ませて医師を呼びました。
一見すると、リュウが野崎を救った場面です。しかし結論は逆でした。リュウは野崎を助けたのではなく、自分を「命の恩人」に見せて心を支配しようとしたのです。
ここでは、なぜ9日間だったのか、水と医師を与えた本当の狙い、そしてリュウが語る「究極の愛」が何を意味するのかを整理します。
リュウの目的は、野崎から情報を聞き出すだけではありません。心身を極限まで弱らせたあと、自分だけが救いの手を差し伸べることで、野崎の判断力と抵抗する意思を奪おうとしました。
第18話で描かれた計画は、次の三段階に整理できます。
| 段階 | リュウの行動 | 狙い |
|---|---|---|
| 1 | 野崎に食事と水を与えない | 体力と判断力を奪い、抵抗できない状態へ追い込む |
| 2 | 帰還後、シンを叱って野崎へ水を与える | 自分を加害者ではなく救済者だと思わせる |
| 3 | 医師と点滴で命をつなぐ | 死なせず、支配し続けられる状態に置く |
つまり、シンの暴走をリュウが止めたのではありません。別室で樊林杏(ハン・リンシン/宮下今日子さん)へ明かした内容から見ると、シンへの叱責まで含めて野崎に見せる芝居だったと分かります。
第17話でリュウは、長春へ行き「10日で戻る」と野崎へ告げていました。ところが第18話では、予定より1日早く帰還。野崎は飲食を断たれて9日目でした。
第17話の時点では、この「10日」が野崎へ与えた脱出の猶予ではないかという見方もできました。しかし第18話の答えを踏まえると、10日は野崎を救うまでの猶予ではなく、心を折るために設定した期限だった可能性が高くなります。
1日早く戻ったのは、野崎が想定以上に危険な状態へ陥ったためでしょう。リュウは野崎を苦しめたい一方で、死なせたいわけではありません。自分のそばに置き続けるには、生きていてもらわなければならないからです。
ただし、リュウが胸元を3回叩いた仕草そのものは、第18話でも説明されていません。「胸を3回=洗脳開始の合図」とまでは断定できず、分かったのは10日間の不在が救出計画ではなかったことです。
リュウの行動が恐ろしいのは、野崎の命を奪おうとしているのではなく、体を救いながら意思を奪おうとしている点です。
野崎の前では、リュウはシンの非道に怒り、水を与え、医師を呼ぶ人物として振る舞いました。野崎が最も苦しい瞬間に現れた唯一の救済者になることで、「この人に従えば生きられる」という依存を作ろうとしたのでしょう。
しかし、これはリュウ自身が考えるマインドコントロールの筋書きです。経験豊富な公安捜査官である野崎が、すぐにリュウの思いどおりになるとは限りません。従ったふりをして脱出の機会を待つ可能性も十分にあります。
「人間は水なしで3日しか生きられない」とよくいわれますが、実際の限界日数を一律には決められません。気温や湿度、体格、健康状態、活動量などで大きく変わるためです。
ただし、医学資料では重度の脱水により、意識の混乱、血圧低下、急性腎障害、けいれん、ショック、多臓器不全が起こり得るとされています。9日間まったく水分を取らない設定は、極めて生命の危険が高い状態です。
第18話でも、野崎は自力で抵抗できないほど衰弱し、リュウは水だけで済ませず医師と点滴を用意しました。この描写は、野崎が単に空腹だったのではなく、すぐ医療介入が必要な重症状態だったことを示しています。
一方で、劇中では室温、野崎の体調、わずかな水分摂取の有無、検査数値までは示されていません。そのため、「現実でも必ず9日間生存できる」「絶対に不可能」と、日数だけで断定することはできません。
第18話では、リュウの歪んだ愛と対照的に、乃木憂助とノコル(二宮和也さん)の兄弟愛が描かれました。
乃木は、自分がテントを壊滅へ追い込んだ負い目から、ノコルへ協力を頼むことをためらいます。それでもノコルは過去を蒸し返さず、自分の意思で兄に全面協力すると決めました。
ノコルの愛は、相手が何を望んでいるかを受け止め、自分も危険を引き受けるものです。対してリュウの愛は、野崎を弱らせ、選択肢を奪い、自分だけを頼る存在へ変えようとします。
同じ「愛」でも、一方は相手を自由にし、もう一方は相手を所有する。前半戦の区切りとなる第18話は、最強チーム結成の裏側で、この二つを意図的に並べた回だったと考えられます。
現時点で確定しているのは、リュウが野崎を支配する計画を立てたことまでです。成功したとはまだ描かれていません。
今後は、次の三つの展開が考えられます。
最も『VIVANT』らしいのは、野崎がリュウの「自分を愛してほしい」という弱点を逆に利用する展開でしょう。ただし、野崎の身体は深刻に弱っています。頭脳戦を始める前に、まず命をつなげるかが第19話の焦点です。
リュウは野崎の命を救いたいのではなく、野崎の人生を自分のものにしたい。第18話で明らかになったのは、敵味方の区分を超えた愛情ではなく、愛を理由に相手の意思を奪う危うさでした。
しかし、相手はあの野崎です。支配されたように見せながらリュウの執着を利用するのか、それとも心身の限界が先に来るのか。二人の本当の勝負は、救出劇のあとから始まります。