※この記事は『VIVANT』第17話までの内容に触れています。
『VIVANT』第17話で、ジャミーン(本間さえさん)がスマートフォンの音声を使い、乃木憂助と会話しました。その声を担当したのは、『ポケットモンスター』のピカチュウや『ONE PIECE』のトニートニー・チョッパーで知られる大谷育江さんです。
ジャミーンまでドラムと同じようなアプリを使うのは、単なる人気演出の繰り返しなのでしょうか。
先に結論をいうと、ジャミーンには「母親を目の前で亡くした衝撃で話せなくなった」という背景があり、さらにモンゴル語で入力した言葉を乃木や柚木薫に伝わる日本語音声へ変える必要があります。話せない背景と、相手に通じる言語へ変える役割は別の問題であり、翻訳アプリがその両方をつないでいるのです。
ジャミーンが肉声で話さない背景には、幼いころに母親を目の前で亡くした衝撃があります。ただし、劇中で具体的な医学的診断名まで示されたわけではありません。「失声症」と言い切るより、強い心的ショックのあとに話せなくなった人物と説明するのが正確です。
一方、スマートフォンから日本語を流す理由は言語にあります。宮崎陽平監督は第17話の放送後、ジャミーンがモンゴル語で入力し、音声だけを日本語で出す翻訳機を使っていると説明しました。
つまり、ジャミーンは日本語を話せないから黙っているのではありません。発声できない事情が先にあり、自分が入力できるモンゴル語を、乃木や薫に伝わる日本語へ変換しているのです。スマホは彼女の代わりに話す「声」であると同時に、二つの言語をつなぐ通訳でもあります。
二人とも自分では声を出さず、スマートフォンの日本語音声で会話するため、同じ設定に見えます。しかし、確認できている範囲では、アプリを使う事情まで同じではありません。
| 人物 | 話さない背景 | スマホ音声の役割 |
|---|---|---|
| ジャミーン | 母親を目の前で亡くした衝撃のあと、話せなくなった | モンゴル語で入力した内容を日本語音声にして伝える |
| ドラム | 日本語は理解できるが話せない。成人後に肉声を使わない詳しい理由は未公表 | 自分の意思を日本語音声として野崎や乃木たちへ伝える |
特にドラムは、サイドストーリー『ドラム―VIVANT THE ORIGIN STORY―』の少年時代には肉声で会話しています。したがって、生まれつき一度も話せなかった人物ではありません。ただし、その後に話さなくなった理由は明かされておらず、病気やけが、トラウマ、本人の選択のどれかを断定することはできません。
また、二人が使うものが同じアプリなのか、同じ翻訳方式なのかも公式には説明されていません。見た目の共通性は明らかですが、ジャミーンは理由が示され、ドラムにはまだ謎が残るという違いがあります。
大谷育江さんは、2026年7月配信のサイドストーリー最終話ですでにジャミーンの携帯音声を担当していましたが、『VIVANT』本編への登場は第17話が初めてです。
大谷育江さんの声は子どもらしい親しみやすさを持ちながら、短い言葉にも感情を感じさせます。ジャミーン本人は表情や視線で思いを伝え、スマホからは大谷育江さんの声が流れる。この二つが重なることで、機械音声でありながら、単なる読み上げではない温かさが生まれました。
ドラムの携帯音声を担当する林原めぐみさんも同様です。本人の声ではないのに、視聴者にはいつの間にか「ドラムの声」として定着しました。俳優の表情と声優の声が一人の人物を一緒に作る、珍しいキャラクター表現です。
第2シーズンでは、乃木を支援するAIハヤトの声を高山みなみさんが担当しています。これで『VIVANT』には、『名探偵コナン』の主要人物を演じる声優3人がそろいました。
| 声優 | 『VIVANT』での役割 | 『名探偵コナン』の役 |
|---|---|---|
| 高山みなみさん | AIハヤト | 江戸川コナン |
| 林原めぐみさん | ドラムの携帯音声 | 灰原哀 |
| 大谷育江さん | ジャミーンの携帯音声 | 円谷光彦 |
正確には『名探偵コナン』の全主要声優が勢ぞろいしたわけではありません。それでも、コナン、灰原、少年探偵団の光彦というおなじみの3人の声が、別の形で同じドラマに集まったのは大きな遊び心です。
しかも3人とも、画面に姿を見せず、機械や端末を通じて人物を支えています。高山みなみさんは情報を処理するAI、林原めぐみさんはドラムの頼もしさと愛嬌、大谷育江さんはジャミーンの繊細さと温かさを声で補っています。同じ「声の出演」でも、役割をきちんと変えているところが巧みです。
『VIVANT』は国家、諜報、裏切り、テロを扱う緊張感の強い作品です。その中で、ドラムの表情と林原めぐみさんの愛らしい声が重なる場面は、視聴者が少し息をつける時間になってきました。ジャミーンと大谷育江さんの組み合わせにも、同じように張り詰めた空気を和らげる効果があります。
ただし、今回確認した公式資料では、福澤克雄さんが「癒やしキャラにするため、あえてドラムを話させなかった」と直接説明した発言までは確認できませんでした。したがって、これは公式に明言された制作意図ではなく、実際の画面から読み取れる演出効果として捉えるのが妥当です。
ジャミーンとドラムにスマホ音声を持たせたことで、二人はセリフがない人物ではなく、「声の出どころが本人の外にある人物」になりました。だからこそ、わずかな表情や間にも目が向きます。翻訳アプリは会話の道具であると同時に、俳優の無言の演技を際立たせる仕掛けなのです。
ジャミーンとドラムは、同じようなスマートフォン音声を使いながら、その背景は同じではありません。一方で共通しているのは、本人の表情と声優の音声を組み合わせて一人のキャラクターを作るという『VIVANT』独特の演出です。今後、ジャミーンが肉声を取り戻すのか、ドラムが話さなくなった理由まで明かされるのかにも注目です。