『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』が公開され、青島俊作が再び映画の主役として帰ってきました。2012年の『THE FINAL』から14年。「なぜ今になって復活したのか」は、シリーズを追ってきた人ほど気になるところでしょう。
公式の制作ノートを読むと、2024年の再始動時から青島主演作まで決まっていたわけではありません。当初の構想は室井慎次の2部作で、その脚本を読んだ織田裕二さんと制作陣のやり取りが、次の映画を動かすきっかけになりました。復活の経緯と、今の青島をどう描くかという二つの段階に分けて見ていきます。
まず数字を整理すると、青島主演の映画『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』は2012年公開、新作『N.E.W.』は2026年公開です。この間を指すのが「14年ぶり」という表現です。
ただし、『踊る』という企画全体が14年間まったく動かなかったわけではありません。2024年には柳葉敏郎さん主演の『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』が公開されました。公式の制作ノートによると、2024年の「踊るプロジェクト」始動時に構想されていたのは、この室井作品の2部作だけだったそうです。
| 時期 | 制作上の動き |
|---|---|
| 2012年 | 青島主演映画『THE FINAL』公開 |
| 2024年 | 室井慎次の映画2部作でプロジェクト再始動 |
| その後 | 織田裕二さんと制作陣のやり取りを経て、青島主演作が具体化 |
| 2026年 | 『N.E.W.』公開 |
つまり「14年ぶりの青島主演映画」と「2024年に再始動したシリーズ」は両立します。混同しやすいのは、映画が公開されなかった現実の時間と、青島が作中で過ごした「空白の13年」が別の話だからです。
では、当初予定になかった青島主演作はどう生まれたのでしょうか。公式の制作ノートでは、室井作品の脚本を読んだ織田さんが物語に強く心を動かされ、青島が登場しないことにも思いを伝えた、と説明されています。
織田さんは、かつていかりや長介さんが演じた和久平八郎の年齢に自分が近づくなか、現在の青島は何をしているのか考えていたそうです。制作側との会話から青島を再び描く話が進み、室井作品の終盤に青島が姿を見せる流れへとつながりました。
ここで大切なのは、室井作品が最初から青島映画の宣伝として計画されていた、と決めつけないことです。公式資料が示す順序は、室井2部作の企画が先で、青島主演作の具体化は後。その経緯こそ、「なぜ復活した?」への中心的な答えです。
「14年間空いたのは主演の織田さんが乗り気ではなかったから」と考える人もいるかもしれません。しかし、公開初日の舞台あいさつで報じられた織田さんの発言や、映画公式のインタビューを読む限り、そのように単純化はできません。
織田さんは『THE FINAL』後も青島の将来を思い描いており、公式インタビューでは、和久さんに近い年齢になった頃に次があるかもしれないと考えていたことを振り返っています。ただし、制作側が過去14年間に続編を作らなかった理由を一つに特定できる公式資料は、今回確認した範囲ではありません。本人の意欲と、企画が実際に成立するかどうかは分けて考える必要があります。
青島を主役に戻すことが決まっても、「今の青島をどう描くか」は別の問題でした。公式の制作ノートによると、脚本の検討段階では、青島を後方支援に置くような比較的落ち着いた方向も考えられていました。
そこで本広克行監督が提案したのが、年齢を重ねた青島も東京の街を走るという方向です。公式インタビューでも、当初の動きの少ない案から「走る青島」へと脚本が変わった経緯を監督が説明しています。
青島は若い頃と同じ身体や立場ではありません。それでも現場へ飛び込み、周囲に働きかける人物として描ける。この点は公式資料から読み取れる作品の方向性です。ここからは筆者の見方ですが、昔の活躍をそのまま再現するより、「変わった東京で、変わらない青島らしさをどう見せるか」に復活作の面白さがあるのではないでしょうか。
公式の作品紹介では、2026年の青島は警視庁刑事部捜査第一課におり、仲間とともに東京を奔走します。新たな所属や事件の詳細は作品の物語に属する話で、この記事で扱う制作のきっかけとは区別しておきます。
『踊る大捜査線』が長年支持されてきたことは、新作を考えるうえで大きな背景でしょう。本広監督も公式インタビューで、シリーズの代えがたい価値に改めて気づいたと語っています。
ただ、人気だけを唯一の理由にすると、2024年には室井作品のみが予定されていたことや、青島の描き方が制作途中で変化したことが抜け落ちます。確認できる制作過程をつなげると、室井2部作でシリーズが動き出し、織田さんの青島への思いと制作陣の話し合いから主演映画が生まれ、本広監督の提案で「走る青島」という核が定まった、という流れです。
この整理は「一人の発言だけですべて決まった」という意味ではありません。公式資料に記された複数の転機を時系列で並べたものです。企画決定の社内事情や全員の判断まで外から確定することはできません。
『踊る大捜査線』の青島主演映画が14年ぶりに復活した経緯は、2024年の室井慎次2部作から始まります。当初予定されていなかった青島の新作は、織田裕二さんと制作陣のやり取りを経て具体化し、その後、本広克行監督の「走る青島」という提案が映画の方向性を定めました。
「14年」は2012年と2026年の青島主演映画を結ぶ数字です。シリーズの再始動は2024年、青島の作中の「空白の13年」は別の時間軸。そこを分けると、今回の復活までの道筋が見えやすくなります。